



第92回都市対抗野球大会も、いよいよ優勝決定戦を迎えました。




昨年今年と、東京オリンピックの影響で、晩秋~初冬の開催となりましたが、プロ野球との日程の調整さえ何とかなれば、この時期の開催も決して悪くない。寧ろ一番盛り上がる大会を、1年の締め括りに持ってきてもいいんではないか、とも思います。ただそうなると、京セラドーム大阪の社会人野球日本選手権のスケジュールをどうするか、と言う問題も発生してきそうではあります。




そしてその、都市対抗野球大会の優勝決定戦は、互いに初優勝をかけた、初めての優勝決定戦進出、東京都・東京ガスと、19年ぶりの優勝決定戦進出の、熊本県菊池郡大津町・Honda熊本。









大津町・Honda熊本は、ここまで全試合1点差勝利。猛打で制した試合あり、投手陣の踏ん張りで競り勝った試合のありと、さまざまな戦いぶりでここまで勝ち進んできました。









過去に「町代表」の出場は幾つもありましたが、まだ優勝の栄冠はありません。有望な選手が集まりがちな、大都市のチームも悪くはないとは思いますが、地元九州(もちろん「ばかり」ではありませんが)で育った選手を中心に勝ち上がってきたチーム。









九州勢の優勝ともなると、1954年第25回大会の八幡市・八幡製鐵(2003年解散)以来57年ぶりとなり、中国・四国・九州地区と拡げても、1978年第50回大会の三菱重工広島(初出場初優勝)まで遡らなければなりません。近畿・東海・関東に集中力しがちな優勝チームに、久し振りに九州地区チームの名前を添える事が出来るか。緊張の中、自慢の猛打が炸裂するか。












そして東京都・東京ガス。準決勝はNTT東日本との「東京決戦」を制しての優勝決定戦進出。過去にベスト4、つまり黄獅子旗は2度。そろそろ黒獅子旗が欲しいところ、でしょうか。












関東のチームなので、馴染みはありませんし、事情で一塁側観戦となっていますが、今年の「オトナの野球」の掉尾を飾るに相応しい、東京ドームと言う大舞台。応援しているしていない関係なく、全ての社会人野球ファン注目の試合。互いに初めての黒獅子旗がかかっています。ここまで来れば、技術云々よりも「日本一の勝利への執念」を見せた方が勝つ、とすら思っています。



スターティングオーダー、ならびに審判員は、通常とは違う形での紹介になりました。
スターティングオーダー
先攻:大津町・Honda熊本
1(右)山本卓弥 (神村学園高等部~亜細亜大学)
2(左)中島準矢 (鹿島高校~筑波大学)
3(遊)稲垣翔太 (明豊高校)
4(一)古寺宏輝 (大阪桐蔭高校~関東学院大学)
5(三)田場亮平 (前原高校/沖縄電力からの補強選手)
6(二)石井 元 (履正社高校~明治大学)
7(中)宮川海斗 (佐久長聖高校~上武大学)
8(捕)竹葉章人 (龍谷大学平安高校~立教大学)
9(指)和田裕生 (福岡大学大濠高校~専修大学)












投:横川楓薫 (日南学園高校~東海大学)
後攻:東京都・東京ガス
1(三)石川裕也 (東海大学相模高校~日本大学国際関係学部)
2(右)楠研次郎 (東海大学相模高校~富士大学)
3(中)小野田俊介(早稲田実業高校~早稲田大学)
4(一)地引雄貴 (木更津総合高校~早稲田大学)
5(指)加藤雅樹 (早稲田実業高校~早稲田大学)
6(左)笹川晃平 (浦和学院高校~東洋大学)
7(二)相馬優人 (高崎健康福祉大学高崎高校~法政大学)
8(捕)馬場龍星 (八戸学院光星高校~日本体育大学)
9(遊)北本一樹 (二松学舎大学付属高校~明治大学)












投:臼井 浩 (光明学園相模原高校~中央学院大学)
審判員(皆さん現役、また元国際審判員)



球審:大都 篤 (大阪府野球連盟)

一塁:堀井 明 (埼玉県野球連盟)

二塁:深沢俊一 (神奈川県野球協会)

三塁:熊倉 勝 (東京都野球連盟)




ホームベースを挟んでの両チームの挨拶の後は、審判団だけでの「円陣」。
始球式












事前に告知があったのかどうかは存じませんが、登場したのは栗林良吏投手(愛知黎明高校~名城大学~トヨタ自動車~広島東洋カープ)。1球だけなんだから、全力投球が見たかったなぁ。
成績
1回表




山本卓 2―0から3球目を打ってセンターフライ




中島 初球を打ってサードゴロ




稲垣 0―2から3球目を空振り三振
1回裏




石川 1―2から4球目を打ってサードゴロ




楠 初球を打ってセンター前ヒット






次打者の初球がワイルドピッチ




小野田 1―0から2球目がデッドボール








地引 1―1から3球目を打ってレフト前ヒット しかしセカンドランナー楠ホームタッチアウト




加藤 3―1から5球目を選んでフォアボール














笹川 1―2から5球目が押し出しデッドボール






東京ガス1―0Honda熊本








相馬 1―0から2球目を打ってライト前タイムリーヒット






東京ガス3―0Honda熊本



Honda熊本選手交代















ピッチャー横川に代えて福田大輔(九州国際大学付属高校~白鴎大学)




馬場 2―2から5球目を見逃し三振(の前の空振りの画像です)



2回表








古寺 0―2から3球目を打ってライトフライ








田場 0―1から2球目を打ってセンターフライ








石井 0―2から3球目を空振り三振



2回裏




北本 2―2から7球目を打ってショートゴロ




石川 0―2から3球目を空振り三振




楠 0―2から3球目を打ってサードゴロ






3回表




宮川 2―2から5球目を打ってファーストゴロ








竹葉 1―2から4球目を打ってセカンドフライ




和田 2―2から5球目を打ってセンターオーバーヒット




山本卓 2―2から8球目を空振り三振



3回裏
小野田 フルカウントから6球目を見逃し三振
地引 1―2から4球目を打ってレフト前ヒット
加藤 初球を打ってセンターフライ




笹川 フルカウントから6球目を打ってファーストライナー
4回表
中島 0―1から2球目を打ってサードゴロ




稲垣 2―2から6球目を打ってセカンド内野安打




古寺 1―0から2球目を打ってショートゴロ




田場 1―0から2球目を打ってレフトフライ
4回裏




相馬 1―0から2球目を打ってセンター前ヒット




馬場 1―0から2球目をキャッチャー前送りバント








北本 2―1から4球目を打ってライト前ヒット
次打者石川の2球目(ストライク)にファーストランナー北本セカンド盗塁成功




石川 1―2から4球目を打ってライト前タイムリーヒット






東京ガス5―0Honda熊本
Honda熊本選手交代











ピッチャー福田に代えて林健太(鎮西高校~専門学校コンピュータ教育学院/宮崎梅田学園からの補強選手)







楠 初球を打ってショートゴロダブルプレイ



5回表




石井 0―1から2球目を打ってショートゴロ




宮川 2―1から4球目を打ってセカンドゴロ




竹葉 0―2から3球目を空振り三振
5回裏








小野田 1―2から4球目を打ってサードゴロ送球エラー




地引 1―2から7球目を打ってレフト前ヒット






ファーストランナー小野田はサードタッチアウト
加藤 2―0から3球目を打ってセカンドゴロダブルプレイ



6回表




和田 1―2から4球目を打ってセンター前ヒット




山本卓 1―1から3球目を打ってライトフライ








中島 初球を打ってライトオーバーソロホームラン






東京ガス5―1Honda熊本




稲垣 0―2から3球目を打ってレフト前ヒット








古寺 初球を打ってピッチャーゴロ
6回裏
Honda熊本選手交代



















ピッチャー林に代えて柳澤一輝(広陵高校~早稲田大学)




笹川 1―1から3球目を打ってセンターオーバーソロホームラン









東京ガス6―1Honda熊本




相馬 2―2から5球目を打ってファーストゴロ




馬場 0―1から2球目を打ってレフト前ヒット













北本 1―2から4球目を打ってレフト前ヒット






Honda熊本選手交代











ピッチャー柳澤に代えて片山雄貴(福岡工業大学城東高校~駒澤大学)








石川 2―2から5球目を打ってセンターフライ
楠 初球を打ってライトフライ
7回表





田場 1―1から3球目を打ってライト前ヒット




石井 1―2から5球目を打ってショートゴロセカンドフォースアウト




宮川 1―0から2球目を打ってライト前ヒット









ファーストランナー石井サードタッチアウト




竹葉の代打持永健太朗(筑陽学園高校~東京農業大学) 0―1から2球目を打ってファーストライナー
7回裏
Honda熊本選手交代
代打持永に代えてキャッチャー丸山竜治(熊本工業高校)




小野田 2―2から6球目を空振り三振




地引 フルカウントから7球目を打ってライトフライ




加藤 2―2から5球目を空振り三振
8回表
東京ガス選手交代








ピッチャー臼井に代えて三宮舜(慶應義塾高校~慶應義塾大学/明治安田生命からの補強選手)




和田 初球を打ってレフトオーバーソロホームラン









東京ガス6―2Honda熊本
山本卓 0―2から3球目を見逃し三振




中島 0―1から2球目を打ってョートフライ
稲垣 1―0から2球目を打ってファーストライナー
8回裏
笹川 0―1から2球目を打ってセンターフライ
相馬 初球を打ってセカンドゴロ




馬場 初球を打ってセンター前ヒット
北本 1―2から4球目を打ってセカンドゴロ






9回表
東京ガス選手交代
















ピッチャー三宮に代えて宮谷陽介(報徳学園高校~筑波大学)




古寺 0―2から3球目を見逃し三振




田場 2―2から5球目を打ってセカンド内野安打




石井 フルカウントから10球目を打ってキャッチャーファウルフライ




宮川の代打北村優(下関工業高校~北九州市立大学) 0―2から4球目を打ってレフト前ヒット




丸山 0―1から2球目を打ってレフトオーバー3ランホームラン


















東京ガス6―5Honda熊本




和田 1―2から6球目を打ってセンター前ヒット
Honda熊本選手交代



ファーストランナー和田に代えて江﨑大輔(佐賀商業高校~関東学院大学)




山本卓 2―1から4球目を打ってレフト前ヒット




中島 0―2から3球目を空振り三振
東京都・東京ガス硬式野球、都市対抗野球大会初優勝!おめでとうございます!



1927年創部。社会人野球日本選手権の前身でもある「日本産業対抗野球大会」の第1回で準優勝、そして1978年の社会人野球日本選手権でも準優勝はありました。



東京ガス硬式野球部。都市対抗野球大会への初出場は1955年。そして重ねる事出場22回目。届きそうで届かなかった都市対抗野球大会の頂点。子試合終了の挨拶の後に行われた、山口太輔監督に続いての、2点タイムリーヒットを放った相馬優人選手へのインタビューは、問答になるはずもなく、ご本人も「全然頭が回らない」まま、ただただ「最高でーす!」の繰り返しでした。


それだけ厳しく、苦しく壮絶な戦いが続いた都市対抗野球大会。優勝決定戦はその最たるもの。おそらく3失点後の、ツーアウトからの連続ヒットは、ナインにとっては威圧感しかなかったでしょう。両チームの気魄と意地、そして黒獅子旗への執念。グラウンドに立っていた選手、試合に臨んだ選手しか分からないプレッシャーから解放されたがゆえの、インタビューだったと思います。


これで、来年の都市対抗野球大会には、前年優勝チームとしての「推薦出場」も決まりました。推薦出場チームには、補強選手は認められません。そしてそんな中、連覇を果たしたチームは、過去に5チームしかありません。しかも、予選が免除になる為、調整も難しかろうと思います。

特にここ数年、推薦出場チームの初戦敗退が続いています(確か3年連続)。この辺はチーム関係者もご存知でしょうし、これもまた一つのプレッシャーになるかと思います。この歓喜の輪が解けた瞬間から、2022年第93回都市対抗野球大会に向けての東京ガスの戦いが始まった、とも思えます。

しかしながらこの瞬間の感動と言うのは、選手の皆さんの中に一生涯残るもの。もしかしたらこの大会を最後にユニフォームを脱がれる方もおられるでしょう。この歓喜の輪がまた来年、東京ドームで再現される事をお祈りいたします。改めて優勝、おめでとうございます!






大津町・Honda熊本
000 001 103 5 H12 E1
300 201 00X 6 H12 E0
東京都・東京ガス
試合開始16:07 試合終了18:44

よく「怒涛の反撃」と申しますが、9回表のHonda熊本の攻撃、本当に見事でした。形こそ違うものの、2回戦のJR東日本東北対NTT西日本の、9回裏のJR東日本東北の攻撃を思い起こさせました。と同時に、予選のチーム打率.431の実力を遺憾なく発揮出来たと思います。シーズン最後のこの試合、チームまた選手に残されていた、全ての力、執念と情熱を感じ取る事が出来ました。



しかし残念ながら、ヒットや得点には繋がりませんでした。最後のバッターになってしまった中島選手は、まるで敗戦の全ての責任を一身に背負ったのように、うずくまったまま。しばらくその場を動こうとせず、整列も同僚に抱えられたままでした。正直、あまりにも凄惨なシーンでした。ツーアウトながらランナーは2塁。余程の当たりでない限り、内野の間さえ抜ければ同点、長打なら逆転の場面。






けど、バットは空を切ってしまった。ご自身、6回表の第3打席でホームランを打っているだけに「ここでもう1本」の思いもあったかでしょうが、残念ながらその思いはバットに届かぬまま、ボールはキャッチャーミットに吸い込まれてしまった。そしてゲームセット。黒獅子旗は、これまた初優勝の東京都・東京ガスの手に渡り、今年も関門海峡大橋を越える事なく、大会は終わってしまいました。






中島選手の中では、この空振り三振は、野球人生で生涯忘れる事の出来ない空振り三振になったと思います。そして、熊本に帰られた後は、シーズンオフになるとは思いますが、こんな場面でヒットが打てるようになる為の、練習の日々が続くと思います。私もこの空振り三振は忘れる事は忘れません。また来年、どこかの大会等で元気に野球をされてる所を拝見出来れば、と思います。






そしてHonda熊本。優勝が「たいへんよく出来ました」なら「よくできました」だと思います。全ての社会人野球チームが目指す都市対抗野球大会の舞台、その優勝決定戦。最後まで野球が出来たんだから、胸を張って下さい。



表彰式・閉会式




まずは表彰状。




そして、栄光の黒獅子旗。


日本野球連盟杯と宮原盾。宮原盾は、日本野球連盟の前身、日本社会人野球協会の初代会長、宮原清氏の功績を偲ぶべく、1964年第35回大会から、優勝チームに贈られています。


東京都知事杯と本田記念メダル。ホンダ記念メダルは、日本社会人野球協会第4代会長、本田弘敏氏の功績を称えて、1982年第53回大会より優勝、準優勝両チームナインに贈られています。






準優勝チームのHonda熊本には、表彰状と本田記念メダル、そして準優勝の証でもある白獅子旗。悔しい表彰かと思いますが、最後まで戦ったチームにしか与えられない立派な「勲章」。




最高殊勲選手賞でもある橋戸賞は、東京ガス・臼井浩投手。




準優勝チームから選出される敢闘賞でもある久慈賞は、Honda熊本・片山雄貴投手。
そして、残念ながら画像がありませんが、大会を通じて素晴らしい活躍を見せたチームや選手に贈られる小野賞は、一回戦で前年優勝の大阪ガスを破り、二回戦の対NTT西日本戦で、4点差の跳ね返して逆転サヨナラ勝ちをした、JR東日本東北硬式野球部が選ばれました。




首位打者賞は東京ガス・笹川晃平選手(12打数5安打)。


打撃賞は、セガサミー・中川智裕選手。個人的には準決勝の対Honda熊本戦、ツーアウトランナー無しからの同点ソロホームランが印象に残っています。ご本人が不在だったので、当日の画像をば。




目立った活躍を見せたその年の新人選手に贈られる若獅子賞は3名。古寺宏輝選手(Honda熊本)多田裕作(NTT東日本)瀧澤虎太朗(ENEOS)。個人t系には、Honda熊本が優勝しておれば、橋戸賞とのダブル受賞もあったかもなー、と思ってます。


日本野球連盟・清野智会長の、シーズン終了の挨拶。カンペ付きの挨拶ではありますが、統括団体の一番上の人の挨拶が聞けるのも、社会人野球ならでは。




12日間の大会は無事閉幕しました。そしてこの試合をもって、2021年の社会人野球の、すべての公式戦が終了しました。新型コロナウイルス感染症、また東京オリンピックもあて、何かとゴタゴタしたシーズンではありますが、それこそ「終わり良ければすべて良し」でしょうか。




終了後、東京ガスの胴上げの様子を撮りに行こうかとも思いましたが、Honda熊本の選手の、悔しさもあろうかと思いますが、その充実した表情に絆されて、一塁側にとどまりました。空振り三振の後、あれだけ涙にくれていた中島選手も、笑顔で「記念撮影」に興じていました。
そして


自分の為、自分を応援してくれる家族の為、会社のため、ファンの為。プロ野球とはまた違う、筋書きのないドラマ。この大会を最後にプロ野球に進む選手、そしてユニフォームを脱ぐ選手、新たな気持ちで来年を迎えようとする選手。人生が社会人野球には詰まっている、とすら考えています。


2022年は、都市対抗野球大会、全日本クラブ野球選手権が夏に、社会人野球日本選手権が秋に行われる事が、清野会長から聞かれました。また来年、暑い夏をここ東京ドームでそしてメットライフドームで、さらには暑い秋を京セラドーム大阪で迎えることが出来れば、と思います。
全ての社会人野球の選手の皆様に、そしてこの、やたら長ったらしいだけの記事を見てくださった方々に、改めてこの場を借りて御礼申し上げます。今年一年、本当にありがとうございました。
2021.12.11 / Top↑
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