第91回都市対抗野球大会も全地区予選を終了し、代表32チームが決定。主要大会も残すところJABA伊勢・松阪大会だけ。約1か月間、練習と強化試合・壮行試合を経て、本選突入となります。

今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、プロ野球は、NPBがセ・パ交流戦を中止、日程を大幅に見直しての無観客開幕。まるで社会人野球のオープン戦のような試合が暫く続きました。

アマチュア野球の大会も悉く中止。その最たるモノが、開幕直前になって中止が決定した第92回選抜高校野球大会。夏の大会こそ、都道府県レベルでの「代替大会」が開催されましたが、スポーツ界のみならず、各方面からいろんな議論が飛び交い、喧々囂々、物議を醸し出しました。

そして全国の大学野球の春季リーグや、第69回全日本大学野球選手権も中止。一部地域では秋季リーグも行われましたが、1試合総当たり、入場者をかなり絞るなど、例年に比べかなり規模を縮小しての開催となりました。さらには、他のスポーツが「開催の仕方」を模索している最中の10月上旬には、残念ながら第51回明治神宮野球大会(高校の部を含む)の中止が決定しました。

社会人野球は、第46回日本選手権本選・予選、JABA京都大会やJABA岡山大会、JABA四国大会などの対象大会が中止。第45回全日本クラブ野球選手権も消滅。都道府県から地区レベルに及ぶローカル大会も、残念ながら全て中止、または無観客開催の憂き目に遭いました。

11月下旬に開幕する第91回都市対抗野球大会も、予選は大幅な日程の変更を余儀なくされた上、近畿二府四県の一次予選、ならびに近畿地区二次予選は残念な事に「無観客開催」となりました。ただ、広島県一次予選、中国地区二次予選、また東海地区予選は有観客で行われたりと、都道府県・地区ごとに有観客・無観客のバラツキがあったのには、違和感を感じました。

また4月からの緊急事態宣言中は、チームのオープン戦も中止どころか、練習すらも休止したチームもあり、さらには本社の業績不振の煽りを受け、チーム自体が活動休止になった所も出ました。解除後、オープン戦と、一部の公式戦は徐々に解禁されましたが、近畿地区の企業チームの本拠地グラウンドでのオープン戦は無観客開催が続き、更に長距離移動を伴う遠征も中止が相次ぎました。

その代わりと言っては何ですが、個人的に今年は社会人野球のクラブ登録チームの試合、特にオープン戦を、例年よりもほんの少しだけですが観戦する機会が増えました。で、良い機会なので、クラブチームに関して思う所を、試合の様子の画像を交えながらダラダラと記してみたいと思います。



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日本野球連盟の「クラブ登録チーム」の運営形態は多岐に渡ります。関メディベースボール学院のような野球学校、履正社医療スポーツ専門学校のような「野球コース(学科)」のチーム、企業支援のあるマツゲン箕島やグループ企業支援の神戸ビルダーズ、地元複数企業の支援のある福山ローズファイターズ。かつては企業チームだった三菱自動車京都ダイヤフェニックス。

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また、帝塚山大学OBクラブやDBグラッズのような大学野球部OBチーム、NPO法人化されている八尾ベースボールクラブ、純粋に野球好きの集まった大阪ウイング硬式野球クラブなど、挙げればキリがありません。

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そしてクラブチームの選手は、たいがいの場合、年齢も球歴も見事なまでに様々。普通に会社勤めの方だけに止まらず、在籍中の大学に野球部があるにも関わらず、クラブチームに籍を置いてる選手もおられます。現在、広島県野球連盟所属・三原ヤッサベースボールクラブには何と「高校在学中」の選手もおられます。また、その「お父さん」とも言える世代の現役選手もおられます。

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少し学生野球に入りますが、強豪高校や大学の野球部は、部員が100人とか200人。学生野球でありながらも一軍や二軍など(A、Bなどと称しますが)に分けられ、在学中の3年や4年、公式戦のベンチ入りも叶わぬ選手も多数おられるはず。寧ろ大多数の選手がそうではないでしょうか。

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しかし、そんな大人数の中で漠然と野球をやってて「本当に楽しいかな?」と思うんです。やはり野球選手である以上、スポーツをやっている以上、試合に出ない事には目標すら見つからない。高校野球の阪神甲子園球場、大学野球の明治神宮球場、確かに注目度も高いし、大舞台です。競争相手は多い方がいいとは言いますが、何百人の内の20人かそこらって、難関にも程がある。

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ならば、JABAクラブチームも野球をやる場、試合に出場する場、と言う面で選択肢に入っていいと思うんです。クラブ野球選手権もありますし、都道府県レベルで見ると大会も結構ありますし。週末や休日にしか、全体での長時間練習や対外試合、公式戦が出来ない、と言う割りと大きなハンディキャップはありますが、普段は学校生活が中心になっている学生野球もほぼ同じのはず。

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どうしても試合に出たい、てんで日頃から忸怩たる思いを抱えている学生野球の選手は、人数ばかりの学生野球から、もっとクラブチームに目を向けてみてもいいんではないか、と思うんです。

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野球やサッカー等のスポーツをやってる人の大目標に「プロ」があります。様々なチームを渡り歩いてプロチームに到達される選手もおられますが、クラブチームだとそれだけではありません。都市対抗野球大会もあれば、全日本クラブ野球選手権もあります。そこで優勝すれば社会人野球日本選手権大会出場への道も開けます。都道府県での大会もあります。目標はたくさんあります。

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特に今年の場合、今年から大会に参加したクラブチーム「ハナマウイ(千葉県富里市)」が、南関東築第三代表として、都市対抗野球大会本選に出場を決めました。大阪府では泉州大阪野球団が、クラブ野球選手権常連のマツゲン箕島を降して近畿地区二次予選進出。運営の仕方や練習時間等、差異はあると思いますが、全国のクラブチームの皆さんにはいい刺激になったと思うんです。

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また目立つ何かがあれば、社会人野球の会社登録チームへ移籍の例もあります。今年、岡山県美咲町のショウワコーポレーションからJR西日本硬式野球部に転籍した大山海投手。少し前ではNOMOベースボールクラブから日本製鉄東海REXに転籍した小野耀平投手、前例はあります。

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また、おそらくこんな「元選手」の方がたくさんおられると思いますが、一度は野球を離れてしまった、諸般の事情で離れざるを得なかった方の「復帰」また「原点回帰」の場と考えると、クラブチームの存在意義は、かなり重要になって来るとは思うんですがいかがでしょうか。

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元NPB選手でも、広島東洋カープから戦力外通告を受け、現在は大阪府警寝屋川警察署に勤務されている池ノ内亮介さん(投手)は、「また硬式野球がやりたくなったから」と言うごくごく単純な理由で、今年から八尾ベースボールクラブで、五年ぶりにユニフォームに袖を通されました。

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プロ野球選手は、華々しく引退セレモニーをしてユニフォームを脱ぐ人もいれば、シーズン終了後に球団事務所に呼ばれて「戦力外通告」を受けるなど、様々な形でユニフォームに別れを告げます。けど、まだどこかにくすぶるモノがあるなら、やり切った感、充実感が足りないのなら、環境さえ整えば、登録人数の制限こそありますが、クラブチームに身を投じてもいい、とすら考えています。

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企業チーム・クラブチームに関係なく、選手は、怪我や転勤等、取り巻く環境の変化で、野球から、チームから「離れざるを得ない」方が大半かと思われますが、生活に支障の出る大怪我ならまだしも、転勤先引越し先で、生活環境さえ許せば、もう一度挑戦してるのもありではないでしょうか。

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こんな事を書けば叱られるかも知れませんが、クラブチームに「他人にユニフォームを取り上げられる事」はまずありません。自らの意思と健康な身体さえあれば何歳まででもやれる、と思ってます。

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事実、50代半ばでマウンドに昇る部長兼オーナー兼投手の方もいたり、代打出場でそのまま外野守備に就いたりマウンドに昇る監督さんもおられます。野球は「生涯スポーツ」とも感じます。誰の為でもない、自分の為にプレイを続けたい、燃え尽きるまでやってみたい。クラブチームと言うのは、そう言う人の集まりだと思いますし、これもまた、野球に限らずスポーツの在り方のはず。

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野球を辞めざるを得なくなった事情、人それぞれかと思いますが、やりたくなったら出来る範囲でまた始めればいいんです。燻る気持ちを持っているんならもう一度自分で煽ってみればいいんです。

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スポーツって本来は皆さん「好き」で始めた筈。クラブチームのダッグアウトの様子を見ていると、勝負以前に「好きな野球、楽しむ野球」を見て取れます。目指すところはあれど、まずは「自らが動き、そして楽しむ事」。これがクラブチームの存在意義の一つではないかとも考えてます。

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去年から歩み出し、大きな足跡を残したクラブチームもあります。今年になって産声をあげたクラブチームもあります。少子化に加え、子供の頃からのスポーツの選択肢が増えた事もあり、野球人口の減少が叫ばれていますが、まだまだ、魅力はたくさんあると思いますし、拡がる余地はあるはず。

もっともっと、クラブチームの根が深く広く、そして大きな樹になればいいな、とも考えます。


2020.10.19 / Top↑
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