昨日の由宇練習場での試合中、尋常ならざる空気が流れ込んだ。

前田智徳引退記者会見

前日からまことしやかに囁かれていた話ではあったけど、いよいよ「現実」になってしまった。そして14:00から記者会見。どこのニュースでも見る事が出来ず、結局見たのは帰宅後に動画。

RCCラヂオでは夜「再放送」までやってたたとか。それだけ「おおごと」だった。

中国新聞の夕刊には既に慶されてたそうで。もちろんの事ながら、午前中のうちに地元マスコミには逃されてたんだろうな。もちろん、帰ってきてから読んだ読売新聞にも「速報」みたいな形で経歴だけを載せた簡単な記事。そして今朝の朝刊には記者会見の様子。

それがスポーツ面に載ってたことで「あぁ、離婚記者会見じゃないんだ」などと思った。


旧広島市民球場末期、よくレフトスタンドに席を取った。こんな言い方もないわとは思うけど、ぶっちゃけ「あす引退発表するかも知れない」とか思ってたら、この試合が最後になるかも知れない、と思ったら、ライトスタンドよりも、目の前に前田智徳がいるレフトスタンドだった。

じっとしてなかったな。サイン交換の間にアキレス腱を伸ばしたり、テーピングが気になるのか、太ももをもそもそ掻いたり。それでも、打球が飛ぶと、人が変わったようなダッシュでボールを追う。

ぶっちゃけ、動いているところを見れただけでも十分だった。


2007年日南春季キャンプ。

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練習開始前のウォーミングアップの輪の中にはいた。ランニングだけは皆と一緒に走ってたけど、その後は全くのマイペース。もうそれだけの年齢に達してた。ぶっちゃけ何もかもお任せ。

確か15:00前に全体練習は終わったのかな。30分くらいで出てくる選手もおれば、それを尻目にグラウンドでキャッチボールををしてる選手もいる。それでも前田智徳は出てこない。だからと言ってグラウンドにおるわけでもない。宿を宮崎市内に取っていたので、戻りのバスの時刻も気になる。

もう17:00になろうかと言う頃になって「主役」は出てきた。おそらくその間、マッサージを受けてたんだろうな「ようこんな時間まで待ちよったのぉ」などと言いながらも、面倒くさそうにサイン(笑)。その時にもらったサインは現在、相方の自宅にあります。

2009年は全く音沙汰がなかった。

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一度だけ戦友に連れられて、由宇練習場に行った時、前田智徳はこれまた一人でじっくりと体を作っていた。と言うよりも、自分の置かれた境遇を頭に入れながら、両足と相談でもしてたんだろうな。

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いろいろと憶測も飛んだけど、あんまり気にならなかった。マーティ・ブラウン監督も、思うところあって試合に出さなんだんだろうし、前田智徳も、思う所あって試合に出なかったんだろうし。

ただ、表情はすごく穏やかだったな。

翌年春の、タイガースとのオープン戦。

代打で出てきた前田智徳の見事なホームラン。帰宅してスカイAの録画を見直したら「ルーキー二神がベテラン前田をどう料理するか」と言った直後ののホームラン。誰アナウンサーかもう覚えてませが「○ね」と思ったのと、解説の福本豊氏が「行っちゃった」というたのだけは覚えてる。

当時使ってたコンデジで撮影した動画ではあるけど、未だに何故前田智徳の打席だけ「動画を撮影しよう」と思ったのか分からない。と言うよりも覚えてない。ただどうやって撮ったかは覚えてる。視界の中で、打った瞬間から一歩踏み出すまでを、画面で追いながら、左目の目線は打球を追ってた。

試合終了直後、内野で見てた戦友にこの動画を見せた。号泣してたな。


最後は今春のキャンプ。

一昨年に引退、オーバースローに戻して打撃投手に転身した林昌樹との「18.44mでの会話」。横にいる緒方孝市コーチも、何か言うわけでもなく、ただただ見守ってる。そんな中、たまに己を戒めつつ、15分近くの「特打」。スタンドで見てる人は少なかったけど、無駄に緊張した。

※2000本安打の画像も撮影したんですがDVD-Rの不調で取り出せない(泣)



よく前田智徳を称する言葉に「天才」というのがあるけど、ど素人のワシらには何をもって「天才」と言うのかよく分からないし、どれだけの数字を残せば「天才」の域に達するのか分からない。ましてや「サムライ」とか言う表現はまったくもって理解出来ない。

個人的に思えるのは、前田智徳は天才でも侍でもなく「異常なまでのこだわり屋」じゃないかなと。

無駄な力を入れず思い描いた通りのスイングで、思い描いた通りの打球を打ちたい。この為だけに試行錯誤を送り返してる。ただ、アキレス腱を切ってしまって、それが出来んようになってしもうたけど。

純粋に「来た球を打つだけ」のために、トレーニングし、痛めた両足を厭う。もう絶対に元に戻らないであろう両足その他を、それでも元に戻そうとしてた矢先の骨折。

左尺骨にはボルトが7本入ってるとか。42歳の体にそれだけのものが入っていると言う状態を想像は出来ないけど、それだけ治りにくい部分だったんだろう。こんな言い方は酷かも知れんけど、両足をもがれ、片翼まで折れた前田智徳はもう思い通りに飛べなくなった、と言う事か。

高校野球地方予選で、相手ピッチャーを恫喝した人。一度死んだ人。元気な姿を見せたいが、元気がない人。打席に立つ目的は理想の打球を打つ為の人。実はアイスクリーム大好きな人。浅井樹に抱かれた人(違)。緒方孝市に抱かれた人(これも違)。

クライマックスシリーズ進出を決めた夜に、野村謙二郎監督に引退する旨を伝えたそうですが、怪我云々もあろうけど。後輩の成長を肌で感じ、それが「3位」と言う結果で出た事でそれこそ「もう、大丈夫」とも思ったのかな。そう言えば最近のヒーローインタビューは、周囲を気遣う言葉が多かったし。

最後に一枚。
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昨年のセ・パ交流戦、対阪急ブレーブス戦での一コマ。打席に立った前田智徳。ピッチャーを見据える前に、掲げたバットの先端を見る、前田智徳お馴染みの仕草。毎打席毎打席、このバットの先に見えてたモノは何だったんだろう。理想の打球か思い描いたバットの軌道なのか。


前田智徳、現役引退まであと1試合。スターティングメンバー、ないかなぁ。


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2013.09.28 / Top↑
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